絹糸を吐く蚕には、大きく分けると人工的に養蚕されている家蚕と、野生の蚕である野蚕(やさん)があります 家蚕は良質の糸を量産するために品種改良が重ねられて、現在の絹製品のほとんどは家蚕の糸で作られています 一方、野蚕糸は天然素材であるために、上質で均一な品質の蚕を確保することが難しく、生産は極端に少ないのが現状です 野蚕の特徴は、糸の断面に100個以上の孔質と呼ばれる穴が空いていることです 糸の中にたくさんの管が通っているわけですが、そのせいで、軽くて暖かいという特性があります 野蚕には日本の天蚕をはじめ、中国のサクサン、インドのタサールサンなど多くの品種があります 今回は数ある野蚕のなかでもたいへん珍しい、与那国蚕(ヨナグニサン)の糸で織られた手織り紬をご紹介します 与那国蚕(学名アタカス・Attacus Atlas)の生息地域はインドネシアを中心とした東南アジアです 日本では与那国島と西表島に生息しています 今回の紬は、インドネシアで採取された繭を真綿にして手で紡いだ糸が使われています 近年まで与那国蚕から糸を紡ぐのは不可能とされてきましたが、ジョグジャカルタ王室の要請で世界野蚕学会会長の赤井弘先生や、〈財)大日本蚕糸会・蚕糸科学研究所の西城正子先生などが指導により、その真綿から手紡ぎ糸ができるようになりました 現在ではまだ生産量は少なく、和装関係者でも見たことがない方の方が多いのではないかと思います 〈きもの〉 与那国蚕糸と余呉紬糸の手織り紬 与那国蚕の手紡ぎ糸と、滋賀県・余呉湖畔で手引きされた紬糸を使い、京都で手織りされた紬です 写真の茶褐色の糸が与那国蚕糸で、生成りの糸が余呉紬糸です 染めをまったくほどこしていない、野趣あふれる自然のままの色がこの紬の魅力です 経(たて)にはランダムに、緯(よこ)には一本おきに2種類の紬糸が織り込まれていて、無地といいながらも変化に富んだ表情に仕上がっています 経緯ともに手紡ぎ糸で織られている貴重な諸紬(もろつむぎ)です 価格399.000円(本体価格380.000円) 与那国蚕の製糸の歴史はまだ浅く、インドネシアの女性の雇用創出と子供たちの就学率向上、植樹による環境保全、伝統工芸の育成を目的として1994年から始まりました インドネシア共和国ジョグジャカルタ王室の指導と保護のもとで、2006年にはロイヤルシルク財団が作られて事業の充実が図られています 財団では、同時に同じく野蚕のクリキュラ(黄金繭)の製糸も行われています クリキュラは金色に光る繭で、繭をシート状にしたものを貼り付けた製品は見かけるのですが、真綿から手紡ぎした糸はとても貴重な糸です クリキュラの手紡ぎ糸を使った帯は、まるよでもとても人気のアイテムです こちらは現在は在庫がありませんので、次回入荷したらご紹介したいと思います きものサロンまるよ 916-0026 福井県鯖江市本町2丁目1-20 TEL 0778-51-0236 FAX 0778-51-8384 Top▲ |
by maruyo0236
| 2009-11-10 18:31
| 織りの布
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